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(まあ、今はまだオルガも十三歳の少年だものね)
元々肝の座った性格ではないし、"死"という単語に、恐怖を感じたとて無理はない。
(可愛らしいものね)
そしてこの可愛らしさを、利用しない手はない。
私は「お兄様」と哀愁を漂わせながら、その右手をそっと掬い上げる。
「万が一の際には、お兄様にも悲しんでいただきたいと。そう、願っておりますわ」
祈るように、請うように。掠れ交じりに告げた私に、オルガが息をのむ。
途端、耳までぼっと赤く染まった。
オルガは慌てたようにして私の手から自分の手を引き抜くと、
「ほっ、本当に心を入れ替えたのなら、考えてやらないこともない!」
逃げるようにして大股で去っていく背を、ぽかんと見送る。
(十三歳のお坊ちゃまには、刺激が強すぎたのかしら)
とはいえ今の私の見た目は、十歳の少女だし……。
「お嬢様、大丈夫でございますか?」
気づかわしげに声をかけてきたのは、側で控えていたソフィーだ。
彼女は今にも泣きだしそうなのを堪えるような面持ちで、私の手をふわりと優しく両手で包んでくれる。
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