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「回帰した日から今日まで、そなたは常に上手くやっている。それに、一度や二度失敗したとて、そなたはそれで終いとする女ではないだろう」
「それは、そうね……」
「そなたはそなたらしくやれば良い。私が協力できることなら、いくらでも手を貸そう」
揺れが気持ちいいのか、くあっと欠伸をしてリューネが瞼を閉じる。
(精霊とはいえ、犬のようね……)
愛らしい姿に緊張が解れる。
夕陽に染まる毛並みは艶々と美しく、同じ銀の色を持つ私の髪も、今は同じだけ美しいのかしら、なんて。
(そうよ。私は今日まで、うまくやってきた)
おかげですでに、前回とは随分と異なっている。
そう、たとえば――。
「やっときたか、ミーシャ!」
到着した馬車のドアが開かれるなり、エスコートするように差し出された手。
私は頬が引きつらないよう細心の注意をはらいながら、現時点で最大の優美な笑みを浮かべる。
「お迎えいただき、ありがとうございます。お兄様」
そう。前回との大きな違いの一つに、兄であるオルガとの関係がある。
私の記憶にあるオルガは、顔を合わせれば嫌みったらしい暴言ばかり。
手を上げることこそなかったけれど、いつだって私を疎んでいた。なのに。
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