あの人のためのドレスなんて着ない

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 眼前のオルガは私が乗せた手を振り払うこともなく、むしろ馬車からおりる私のバランスを支えようとぐっと力を込めてくれる。 「なに、俺はお前の兄だからな。初めて皇室主催の夜会に出席する妹をエスコートしてやるのは、当然だろう」 (いったい、どうしてこうなったのかしら……)  変化を感じたのは、あの日。  私の回帰直後に訪ねてきたアメリアと、お茶をした時から。  別々だった食事も、なぜか一緒にとる機会が増え。  更には今日の準備は問題なく進んでいるのかと、嫌味ではなく本気で心配しているように尋ねてきたり。 (アメリアに危害を加えるつもりがないと判断して、警戒をやめたのかしら)  それとも、私と友好的な関係を築いておくことで、アメリアに少しでもアピールしようと? (なんであれ、私にとっても都合が良いわ)  お父様やオルガとの不仲も、私が"悪女"と呼ばれる理由の一つとなっていた。  パーティーでエスコートされる姿を見れば、お父様はともかくオルガとの不仲説はなりを潜めるだろう。
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