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彼の色を纏い、一番手の婚約者候補になる。
そんな特別なひとときに酔いしれていた。
その光景が、アメリアの計画に手を貸すことになっているだなんて、夢にも思わずに。
(今回は、あのドレスを着るわけにはいかない。着たいとも思わないけれど)
アメリアにファーストダンスを約束させた翌日、急ぎ新しいドレスの注文をし直した。
けれど流行りのパターンで仕立て直すには、時間が足りず。ならばと思い立ち、この形にしたのだ。
簡単なデザイン画を描き、直接仕立て人にイメージを伝え、なんとか仕上がったドレス。
十歳の少女には少し大人しいデザインかもしれないけれど、使われた生地も宝石も一級品。
公爵令嬢としての品位は保てているし、何よりも優美な仕上がりに大満足している。
だから、今の私は機嫌がいい。
私は不安げに瞳を伏せ、オルガの腕に添えた指先にくっと力を込める。
「似合いませんでしょうか?」
「いや! そうした意味で言ったのではない! よく似合っているぞ!」
「ありがとうございます、お兄様。このドレス、とても気に入っているので嬉しいですわ」
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