あの人のためのドレスなんて着ない

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 嬉し気な笑みを浮かべて見上げると、オルガは「そうなんだな」と咳払いをひとつ。  意外にも堂々とした足取りで皇城を進み、私を指定された控室に連れていく。  会場へはアメリアと共に、ルベルト殿下によるエスコートで入場しなければならない。  主役の登場は一番最後。なので、それまで別室での待機を命じられている。  迷うことなく辿り着いた控室の扉前で、オルガが足を止めた。 「俺はここまでだ。困ったことがあれば、いつでも俺のところに来い。遠慮はいらないからな」 「ありがとうございます、お兄様。……行って参りますわ」  礼をして、心配を隠しきれない様子のオルガを見送り、重厚な扉と向き合う。  とうとう、この瞬間が来てしまった。  大好きで大好きで、誰よりも愛してほしかった人。  絶対的なその地位をもって私に"悪女"の烙印を押し、この胸を貫いた、憎い人。 (行くわよ、リューネ)  見張りとして立つ騎士に不審に思われないよう胸中で呟いて、「ミーシャ・ロレンツでございます」と軽く膝を折る。  先ほどまでのオルガとの会話を聞いていたからか、騎士は一切の疑いなく、扉に手をかけた。
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