あの人のためのドレスなんて着ない

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 ぎい、と軋んだ音を響かせ、扉が開かれる。刹那、 「ミーシャお姉様! お待ちしておりました!」  駆け寄ってきた金の髪が、視界を奪う。 「アメリア、久しぶりね」 「はい! お姉様はその後、お変わりありませんか?」  気遣うようにして、うるうると瞳をうるませるアメリア。  一度目の私なら、なんて愛らしいのかしらと、そのいじらしい仕草に胸をきゅんとさせていたでしょうね。  けれども、残念。  今の私は、あなたのその白々しい演技などお見通しよ。 「心配してくれて嬉しいわ、アメリア。おかげさまで、あれから体調はいいの。無事に今日を迎えられて良かったわ」  私はそれよりも、と彼女の肩にそっと手を添え身体を離し、数歩後退して距離をとる。 「素敵なドレスだわ。今日という素晴らしい日を迎えたアメリアにぴったりね」  アメリアが身に着けているドレスは、彼女の瞳に近いローズピンクの生地。  そこに、殿下の瞳の色であるルビーレッドの刺繍と、同色の宝石がふんだんに使用されている。 (ああ、覚えのあるドレスね)  生地に殿下の色を使うのではなく、アクセントとして使用したドレス。
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