避けられない殿下とのダンス

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 先ほどとは異なるメロディ。ファーストダンスのそれだ。  頭を上げた私とアメリアの中央に、ルベルト殿下の右手が差し出される。 「ダンスは、どちらが」 (一度目の私が、夢に見るほど待ち望んでいた瞬間ね)  こんな無愛想で無頓着な誘いの、どこにときめいていたのやら。 「さあ、アメリア」  私はにっこりと微笑んで、アメリアの背にそっと手を置く。 「いってらっしゃい。皆があなたを待っているわ」 「ありがとうございます、ミーシャお姉様」  可憐に頬を染めたアメリアが、「よろしくお願いいたします」と殿下の手を取る。  ルベルト殿下は私を一瞥だけして、アメリアを伴ってダンスフロアの中央に進んで行く。 (なによ、あの目。邪魔なんてしないわよ)    本当なら、このまま壁の花になってしまいたいところだけれど。  続いてはじまる二曲目を踊らなければならないので、ダンスフロアを囲う招待客の最前列で控える。  ルベルト殿下とアメリアは互いに礼をして、身体を寄せ合い踊り出す。  殿下を見上げ、嬉し気に綻ぶアメリアの表情は、まさしく可憐な花のよう。
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