避けられない殿下とのダンス

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「まあ、ファーストダンスはアメリア嬢でしたのね。てっきりミーシャ嬢かと」 「聖女候補となったことで伯爵位を与えられたと聞いたが、なかなかしっかり教育されているようじゃないか」 「笑顔の愛らしい少女ですわね。花のようなドレスと相まって、殿下とのダンスは春を呼ぶようですわ」 「対してミーシャ嬢は……あのドレスは一体どうしたというのだ?」 (噂話なら、聞こえないようにやってほしいものね)  ひそひそ、というにはやや声量のある声で交わされる言葉は、私への気遣いなど微塵も感じられない。  いえ、むしろわざと聞かせて、私の反応を伺っているのかしら。 (十の少女だからと見くびっているのでしょうけれど、その手には乗らないわ)  さしずめ、鼻につく公爵令嬢の悔しがった顔でも見てやろうって魂胆なのでしょう?  悪趣味な。けれどもそれが社交界であると、今の私はよく理解している。  一度目のアメリアは、ファーストダンスを踊る私と殿下をさぞ切なげに見つめていたのでしょうね。  身の程をわきまえファーストダンスを譲った、いじらしい少女。  言葉無くとも態度でそう周囲に認識させ、同情を誘った。
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