1748人が本棚に入れています
本棚に追加
「今のそなたをエスコート出来るのは、私だけだろう」
姿勢を正したリューネが、自信たっぷりな金色の瞳を向ける。
「光栄に思うといい。今この瞬間、そなたは帝国一のパートナーを伴っている」
「…………っ」
微笑ましさに、思わず緩んでしまった頬。
私は急いで表情を戻し、そうねと胸中で頷く。
心が温かい。
偽りではないこの感覚を、大事にしたい。
(私ね、銀の色が大嫌いだったの)
オルガと同じ茶色の髪を持つお父様。
その彼が愛し、私を産んだことで命を失ってしまったお母様は、華やかな薄紅色の髪をしていた。
両親のどちらにも似なかった、銀の髪。
この髪のせいで、お母様の不貞が噂された。
愛する女性の命を奪ったばかりか、その死後にもなお、名誉を傷つける"私"という存在。
せめて歴代の聖女に同じ銀の髪を持つ女性がいたのなら、お父様も少しは、許してくれたのかもしれないけれど。
銀髪の聖女はいない。お父様は、銀の色を持つ私をこの世の誰よりも憎んだ。
私にとって、銀は罪の色。だけど。
最初のコメントを投稿しよう!