避けられない殿下とのダンス

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(私を引き戻して復讐の機会をくれたリューネは、私の髪と同じ色でしょう? 今の私にとって銀の色は、他の何にも代えがたい、大切な色だわ)  音楽は終盤に差し掛かっていて、ルベルト殿下とアメリアが最後のターンを決める。  見惚れる周囲の視線に、嫉妬心など微塵も湧かない。  なぜなら私の隣には、最高のパートナーがいるから。  ダンスが終わる。  一斉に沸き立つ会場。皇帝陛下と皇后陛下も、惜しみない拍手を送っている。 (リューネのおかげで、楽しい時間だったわ)  私もまた、曇りない笑顔で賞賛の拍手を送りながら、隣のパートナーへ感謝を述べる。  耳を立て「当然だろう」と胸を張る姿に、そのもふりとした頭を撫でたい衝動にかられるけれど。 (――行ってくるわね)  向けた視線が、ルビーレッドの双眸と交わる。  脳裏にこびりついた、私を貫いたあの冷酷な瞳が重なった。  私はひっそりと喉を上下させつつも、歩を進める。  アメリアは他の男性と周囲で踊るのではなく、一度輪から離れ、観覧を決めこむよう。  疲労に赤らんだ頬で、健気に肩を上下させている。
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