1936人が本棚に入れています
本棚に追加
「お姉様、どうやら悪い夢と判別がつかなくなってしまったのですね。六日前は私のお屋敷で、共にお紅茶を楽しんだではありませんか」
「!?」
そんなはず。そんなはずはない……!
夢ではない。だってアメリアが倒れたのだって、先日が初めてではないもの。
(なにが、起きているの……?)
呆然と。地に膝をついた私を静かに見据え、ルベルト殿下がアメリアの一歩前に出る。
「……クランベル家の主治医から、アメリア嬢が重篤な病を患っているという報告は受けたことがない。この洞窟に咲くテネスの花に、治癒能力があるという話もだ。……だが、ミーシャ嬢。目前に迫った審判の日の前に、あなたがアメリア嬢の殺害を企てているという話は、何度も報告を受けている」
ルベルト殿下が腰に携えた剣を、すらりと抜いた。
松明の炎を受け、艶やかな刃がギラリと光る。
その、一瞬だった。
殿下の後ろ。悲壮な面持ちで口元を覆っていたアメリアが、嘲笑うかのような笑みを浮かべた。
よく知る春の女神のような、純粋無垢な少女の微笑みではない。
最初のコメントを投稿しよう!