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その妖艶ながらも毒はらんだ笑みはまるで、そう――かつてこの国で時の皇帝をはじめとするあらゆる人々を惑わし、破滅へ誘いだ悪女ガブリエラの肖像画に、よく似た。
(まさか)
「アメリア」
私は一縷の望みにかけ、震える声で絞り出す。
「私を、裏切っていたの……? 審判の日の前に、一緒に、この国から逃げ出せたらって……」
「まあ、お姉様」
アメリアは気の毒そうな顔で、祈る聖女のごとく胸の前で両手を組む。
「どちらにガブリエラの審判が下ろうと、処刑を取りやめ、修道院での幽閉を殿下に懇願しましょうとお約束していたではありませんか。審判の日の前に逃げ出すなど……殿下への、裏切りにございますよ」
「!!」
ああ――そう。そうだったのね。
私が愚かだった。
アメリア、あなたのまやかしの光に縋り、愛を注いでしまったのが間違いだった。
「ふ、ふふ」
全てを惑わし、破滅へと導くガブリエラの巫女。
あなたは初めから、私を陥れるつもりだったのね……!
「殿下」
私は必死に口角をあげ、挑発的な笑みで殿下を見上げる。
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