第4話 帰巣本能

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 目当てのものは、変わらず同じ場所に存在していた。くねくねと節くれだった枯れ木の枝の上方に引っ掛かったまま、飛びそうで飛ばずにいる。不思議な光を放つ、赤いハート型の風船。見上げて、シフォンが頷いた。 「確かに、まりあの光に似てるね。正解じゃないかな」  やった! 内心で喝采を上げるも、まりあはすぐに首を捻った。 「あれをどうするの?」 「まりあが触れればいい筈だけど……遠いね」  何せ、風船が引っ掛かっている枝は、まりあの背丈よりも遥かに上の方にある。まりあは無い袖を捲る仕草をして、気合を入れた。 「登ってみる」 「大丈夫?」 「任せて! こう見えて、木登りは得意なんだから」  ふんすと鼻息を荒くし、まりあは早速木に近寄った。幸い凹凸が多く、登りやすそうな形状をしている。こればかりは裸足で良かったかもしれない。  まずは低い位置にある出っ張りに足を乗せ、一番近くにある枝に手を掛けた。ふと、こんな考えが過ぎる。 (まさか、この木まで動いたりしないよね)
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