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目当てのものは、変わらず同じ場所に存在していた。くねくねと節くれだった枯れ木の枝の上方に引っ掛かったまま、飛びそうで飛ばずにいる。不思議な光を放つ、赤いハート型の風船。見上げて、シフォンが頷いた。
「確かに、まりあの光に似てるね。正解じゃないかな」
やった! 内心で喝采を上げるも、まりあはすぐに首を捻った。
「あれをどうするの?」
「まりあが触れればいい筈だけど……遠いね」
何せ、風船が引っ掛かっている枝は、まりあの背丈よりも遥かに上の方にある。まりあは無い袖を捲る仕草をして、気合を入れた。
「登ってみる」
「大丈夫?」
「任せて! こう見えて、木登りは得意なんだから」
ふんすと鼻息を荒くし、まりあは早速木に近寄った。幸い凹凸が多く、登りやすそうな形状をしている。こればかりは裸足で良かったかもしれない。
まずは低い位置にある出っ張りに足を乗せ、一番近くにある枝に手を掛けた。ふと、こんな考えが過ぎる。
(まさか、この木まで動いたりしないよね)
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