第2話 人喰い花と殺人熊

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「貴女、生者でしょう? その光で一目瞭然だわ。ハロウィンの夜は、貴女みたいに〝向こう側の子〟が迷い込んでくることも稀にあるのよね。貴女の纏う生命(いのち)の光……それを取り込めば、きっと私ももう一度〝向こう側〟に!!」  フルールの興奮に合わせて、花弁の力が一層強まる。少女も精一杯抗うが、か弱い彼女の力ではたかが知れていた。次第に押し負けて踏ん張りが効かなくなってしまう。いよいよ巨大な花の口腔内に突入してしまいそうになった時。 「ぎぃぃいいい――っ!!」  耳を(つんざ)くような悲鳴が辺りに響き渡った。いきなり高所から落下する。ばしゃんと勢いよく浅い水面に叩き付けられるも、衝撃の(ほとん)どは肉厚な花弁が吸収した為、無事に済んだようだ。  ぱかりと力無く割れたそれの隙間から水が入り込み、少女はずぶ濡れになって外に這い出した。慌てて周囲を窺う。 (今度は、何が起きたの?)  異様な静けさ。アトラクションがいつの間にか停止し、妖精達の歌声やBGMが消えていた。とりあえず、ボートがこちらにぶつかってくる心配は無さそうだ。
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