第2話 人喰い花と殺人熊

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『シフォン! おいで!』  少女が腕を広げて呼び掛けると、ふわふわの尻尾を左右に振って、感極まったように飛び込んでくる。ペロペロと頬を舐められるこそばゆい感触に、少女は笑ってはしゃいだ。 「まりあ! 良かった、無事だね!」  少女の中に残されていた記憶をなぞるように、目の前の小型犬も全く同じ行動をした。はち切れんばかりに尻尾を振りながら、飛びついて顔を舐める。「何か苦い」と舌を出したのは、たぶんあの謎の蛍光イエローの液体の所為だろう。  少女は唖然と呟いた。 「……シフォン?」  そうだ、シフォンだ。〝詩奔〟と書いて、詩奔(しふぉん)。自分の〝真現実(まりあ)〟という名前に負けず劣らずの当て字っぷりは、同じ人物から名付けられた証拠。シフォンは、少女まりあの家の飼い犬なのだが――。 「シフォンが喋った!?」  まさかの事態に、まりあは大いに面食らった。愛犬が人語で話すなんてことは、勿論これが初めてだ。  それに、シフォンは数年前に亡くなっていた筈だった。 「どうして……ああ、そっか。これ、やっぱり夢なんだ」 「そうじゃないんだ。まりあ、落ち着いて聞いて」
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