第2話 人喰い花と殺人熊

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 しかし、シフォンが話す間は与えられなかった。ふと何かに気を取られたような反応を示すと、白いチワワは鋭く告げた。 「まりあ、走って!」 「え?」  シフォンの視線の先を辿ると、今まさに紫の熊が〝フェアリー・ライド〟のアトラクションから出てくるところだった。  例の斧はしっかりと熊の手に握られている。数メートルの距離を隔てて尚、虚ろなボタンの瞳と目が合う感覚がはっきりとあった。  熊は何の躊躇(ためら)いもなく、まりあ目掛けて斧を投擲(とうてき)した。 「きゃあ!」  シフォンを抱いたまま、まりあは咄嗟にその場に屈み込んだ。恐ろしい風音を立てて重量級の凶器が頭上を辛くも通過していく。計算されたように斧は宙を旋回し、ブーメランよろしく熊の手元へと舞い戻った。  またも間一髪だった状況に、まりあは遅れてゾッとした。やっぱり、あの熊は彼女を狙っているのだ。妖精フルールの言っていたことは、あながち嘘ばかりではなかったのかもしれない。 「まりあ、早く!」  シフォンに促され、まりあは震える膝を叱咤して立ち上がった。
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