第3話 この世界の正体

2/8
前へ
/189ページ
次へ
 シフォンがまりあを掴むゾンビの手に噛み付いた。しかし、ゾンビには痛覚が無いのか、無反応だ。代わりに、まりあの金縛りが解けた。 「いやぁあっ!!」  ハッとして叫び、ゾンビの胸元を思い切り強く押し返す。元々弱い力しか篭っていなかったゾンビの手はすぐに離れ、本体はふらふらとたたらを踏んで後ろに倒れ込んだ。それを見て取る間もなく、まりあは再び走り出した。 (何なの!? ‪仮装じゃないの!? ここの人たち、みんなおかしいよ!!)  周囲に助けを求めることは不可能だ。まりあが絶望的な気分になった時、シフォンが提案してきた。 「まりあ、あっち! 観覧車に乗ろう!」 「え? でも」 「大丈夫、ぼくを信じて!」  力強い言葉。まりあはひとまず疑問を呑み込み、頷いた。目前に(そび)える巨大な輪の元へと駆け寄り、丁度下に到着していたゴンドラに急いで乗り込む。扉は自動で閉ざされ、一人と一匹を乗せたゴンドラはすぐに上昇を始めた。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加