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シフォンがまりあを掴むゾンビの手に噛み付いた。しかし、ゾンビには痛覚が無いのか、無反応だ。代わりに、まりあの金縛りが解けた。
「いやぁあっ!!」
ハッとして叫び、ゾンビの胸元を思い切り強く押し返す。元々弱い力しか篭っていなかったゾンビの手はすぐに離れ、本体はふらふらとたたらを踏んで後ろに倒れ込んだ。それを見て取る間もなく、まりあは再び走り出した。
(何なの!? 仮装じゃないの!? ここの人たち、みんなおかしいよ!!)
周囲に助けを求めることは不可能だ。まりあが絶望的な気分になった時、シフォンが提案してきた。
「まりあ、あっち! 観覧車に乗ろう!」
「え? でも」
「大丈夫、ぼくを信じて!」
力強い言葉。まりあはひとまず疑問を呑み込み、頷いた。目前に聳える巨大な輪の元へと駆け寄り、丁度下に到着していたゴンドラに急いで乗り込む。扉は自動で閉ざされ、一人と一匹を乗せたゴンドラはすぐに上昇を始めた。
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