第3話 この世界の正体

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 ということは、もしかしてあの熊も着ぐるみという訳ではなく、あれが実体なのだろうか。まりあがその可能性について考察していると、「それはともかく」とシフォンが話を戻した。 「身体と魂が分離したままで長時間いると、危険なんだ。最悪、戻れなくなってしまう」 「そんな……それじゃあ、早く戻らなきゃ。どうしたら、元の世界に帰れるの?」  焦り出したまりあに、シフォンが告げる。 「〝記憶の欠片〟を探すんだ」 「きおくのかけら?」 「ここに居ると、神様の加護なしじゃ誰でも忘却の呪いを受ける。まりあにも既に影響が出ている筈だよ」  具体例を考えるまでもなく、彼女には心当たりが有り過ぎた。 「わたしが色々忘れてるのって、そのせいだったんだ……」 「まりあがここに迷い込むことになった原因は、ハロウィンの所為だけじゃない。実は他にもあるんだ。それを思い出して、きちんと対処しないといけない」 「つまり?」 「今のままだと帰れない。全ての記憶を取り戻さないと」  ごくり、まりあは思わず喉元のものを嚥下する。
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