第1話 迷い込んだ少女

2/8
前へ
/189ページ
次へ
(何だろう、これ……) 「ここよ、ここ」  首を傾げていると、再び声がした。鈴を転がすような、愛らしいソプラノボイス。 (あれ? ずっと聞こえていたのは、こんな声だった?)  違和感を覚えつつ、床から身体を起こす。音の出処を探ると、体長十五センチ程の小さな妖精が宙に浮いていた。ピンク色のふわふわとしたウェーブヘア。お花の形をしたスカートドレス。ちょうちょみたいなピンクの羽根で、少女の頭上をひらひらと舞っている。  夢から()めた気がしていたのに、まだ夢の中に居るようだと、少女は目を擦った。それでも妖精は消えず、しっかりとそこに存在している。 「わたしを呼んでいたのは、あなた?」  問い掛けると、妖精は頷いた。 「私はフルール。花の妖精よ。貴女は?」 「わたしは」  少女は答えようとして、詰まる。愕然とした。 「思い、出せない……」
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加