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(何だろう、これ……)
「ここよ、ここ」
首を傾げていると、再び声がした。鈴を転がすような、愛らしいソプラノボイス。
(あれ? ずっと聞こえていたのは、こんな声だった?)
違和感を覚えつつ、床から身体を起こす。音の出処を探ると、体長十五センチ程の小さな妖精が宙に浮いていた。ピンク色のふわふわとしたウェーブヘア。お花の形をしたスカートドレス。ちょうちょみたいなピンクの羽根で、少女の頭上をひらひらと舞っている。
夢から醒めた気がしていたのに、まだ夢の中に居るようだと、少女は目を擦った。それでも妖精は消えず、しっかりとそこに存在している。
「わたしを呼んでいたのは、あなた?」
問い掛けると、妖精は頷いた。
「私はフルール。花の妖精よ。貴女は?」
「わたしは」
少女は答えようとして、詰まる。愕然とした。
「思い、出せない……」
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