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「遊園地の外に出るんじゃないの?」
「外は外で色んなおばけが出るから、危ないのよ。ここに居た方が安全」
「でも……わたし、帰りたいよ」
帰りたい。口にして、それから思う。――何処に?
自分は、何処から来たのだっけ。
「帰るにしても、まずは自分のことを思い出さなくちゃでしょ。とにかく、一旦ここに入ってからじっくり考えましょう」
妖精の言うことは尤もだったので、少女は頷くしかなかった。他に並んでいる人も居ないので、すぐにボートに乗り込む。誘導役の係員なども不在のようだったが、ここではそういうものなのかもしれない。
程なくして、乗り物はレールの上をゆっくりと滑り出した。そのまま建物の内部へと到ると、少女の眼前に広がったのは幻想的な妖精の森だった。
「わぁ……!」
少女から感嘆の息が漏れる。
床から天井まで見上げる程の高さの木々が立ち並ぶ中、柔らかな木漏れ日に照らされて色とりどりの草花が咲き誇っていた。どれもファンタジー映画で見るような、少女の背丈ほどもある大きさだ。それらの間をフルールによく似た妖精達が、愉快げに歌いながら飛び交っている。
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