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そんな中、二人は、小さな集落を見つけた。
家は、五軒ほど有ったが、もう、人は住んでいない様な、廃屋だった。
「誰も居ないようだ、ここなら、雨だけは防げる、暫く此処に居るか?」
「そうだね」そう言っている二人の後ろから
「お前たち、そこで何をしている」と言う、大きな声がして
二人は飛び上がる程、驚く。
振り返ると、60~70歳くらいの、お爺さんだった。
「何もしていません」嶺二がそう言うと、お爺さんは、二人をじろじろ見て
「腹が減っているんだろ、うちに来い」と、言う。
そう言われた二人の腹が、ぐう~きゅるると鳴る。
そのお爺さんの家は、集落の外れに有り、表札には外村公男と書かれていた。
他に、名前が無かったので、一人暮らしだろうと、見当をつける。
お爺さんは、縁側に腰掛けさせた二人に、昼飯の残りだと
ご飯と、豚汁を、出してくれ、目玉焼きも作ってくれた。
二人が、久しぶりの食事らしい食事に、夢中になっていると
「お前ら、行く所が無いんなら、うちで住め」
と、公男は、意外な事を言った。
「え?ここに?」「そうだ、俺は一人暮らしだからな~気兼ねは要らん」
「他に、ここで住んでいる人は、居ないんですか?」嶺二がそう聞くと
「うん、三か月前までは、隣に、もう一人居たんだが、施設に入った」
公男は、淡々とした口調で言う。
「俺たちの事、変だと思わないんですか?」子供の体に、大人の顔
寒いのにシャツ姿、そして裸足、誰が見ても、ぎょっとする筈だった。
「思わないさ、俺だって、変な爺さんだし」
「変には、見えませんけど」遥が、そう言うと
「嫁も貰わず、人付き合いもせず、ずっと一人で暮らす
変人だって言われ続けたよ」公男は、そう言って小さく笑った。
小さな頃から、人見知りと言うか、人と話す事が苦手で
一人で居る方が、好きな子供だったそうだ。
大人になっても、それは変わらなかったが、それでも縫製工場に就職できた。
仕事は、人一倍熱心だったが、そこでも、一切人付き合いはせず
家と会社の往復だけの生活だったという。
元々、物を作る事が好きだったので、家にもミシンを買って
それで、いろいろな服や、ぬいぐるみ、バックなどを縫うのが、趣味だった。
つまり、工場でも家でも、ずっとミシンと一緒の生活だったのだ。
「ミシンって、あれ?」「ああ、そうだ」
部屋の中には、業務用のミシンが有り、その周りには、いろいろな布も有る。
どうやら、今だにミシンを使っている様だった。
「俺達、行く所も無いし、お世話になるか」嶺二が、遥に聞く。
「そうだね、これからは寒くなるし」遥がそう言うと
「そうか、そうか、じゃ、風呂を沸かしてやるからな」
公男は、いそいそと、風呂を沸かしに行く。
そして、風呂が沸くまでにと、二人の体のサイズを測る。
二人が着る服を、作ってやると言うのだ。
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