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翌朝、目覚めると、枕元に、出かける用の服が、二人分
きちんと畳まれて有った、夜なべをして、縫ったのだと言う。
「凄いですね~」二人は驚き乍ら、その服を着て
公男が作ってくれた朝食を食べ、出掛ける事になった。
「マスクだ、これを付けないと、どこにも、行けないからな」
公男は、二人にマスクを渡して言う。
コロナが、大流行して、政府から、マスクを掛ける様に言われていると言う
二人が、まだ死ぬ前には、そこまででは無かったが、あれから酷くなった様だ
だが、それは二人には、好都合だった、マスクで顔は半分以上覆われ
見えるのは、目だけだったからだ。
二人は、喜んで久しぶりの街中へ行く。
行きかう人々は、全員マスクをしていて、店に入るのも出るのも
必ず、アルコールで消毒したり、熱を測ったりする。
「たった一年ほどで、随分変わったな~」嶺二と遥は、驚きの目を瞠る。
公男は、二人に、靴やサンダル、スリッパや長靴まで買った。
「そんなに、、お金が、、」「心配するな、金なら有るんだから」
そう言いながら、二人に必要な、身の回り品を次々と買っていく。
「これからは、寒くなるからな~」と、二人の布団や毛布迄どんどん買う。
驚く二人に「俺は、買い物をするのが好きなんだ」と、言って笑う。
最後に、家に無い食材を仕入れて、荷物で一杯の軽四を走らせて帰る。
公男が、真面目に40年勤めた会社を、早期定年退職したのは
父親が死んで、一人になったからだった、その時、公男は、55歳だった。
父親が残してくれた、土地と家を売り、過疎化が進む、この集落なら
人付き合いもしなくて良いと思って、ここへ住んだのだと言う。
退職金、土地や家を売ったお金、父親の保険金などで、結構な金も有った。
それから10年、人付き合いもせず、酒も煙草も飲まず
半自給自足の生活で、使う金も少なく
今では、年金も貰えるし、本当に、お金には困らないのだと言う。
「少しは使ってやらないと、国も困るだろ?」そう言って笑う。
「俺たちが、稼げるようになったら、お返ししよう」
「そうね、それまでは、甘えていよう」二人は、そう決めた。
それから、三人の不思議な生活が始まった。
大人は苦手だが、子供は好きだと言う公男は、まるで二人の父親の様に
まめまめしく、面倒を見る。
嶺二は、公男の畑仕事の手伝い、遥は、家の掃除や洗濯等の家事をする。
公男は、有り得ない程、どんどん成長する二人の体を
不思議だとも思わないのか、その体に合わせて、夜なべに服を縫う。
「また、背が伸びたのか?今度は、少し大人っぽいのにするか」
等と言っては、嬉々として、次々と服を縫い、まるで着せ替え人形の様に
いろいろな服を着せては喜ぶ。
やがて春になり、二人の体は、中学生くらいの大きさになった。
公男は、二人に自転車を買ってやる。
「自転車なら、一人でも、街に行けるだろ?」
そう言う公男に「やった~有難う」「嬉しいわ」二人も、大喜びする。
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