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もやもやした気持ちで、待ち合わせ場所の、カフェに行った遥は
はっとする、同級生の二人が居たからだ。
二人とも、高校の制服では無く、私服だった。
『そうか、皆は、もう大学生なんだ』そう思いながら、二人の後ろの席に座る
「あの、00子の家、倒産したんだよ、知ってた?」と、一人が言う。
「ああ、テレビのニュースで見たよ、コロナの所為なんだって?」
「それで、00子、大学行くどころじゃ無くてさ、多額の負債の返済に
バーで働いているんだって」その話に、遥は驚く。
皆のボス的存在だった00子の家が、そんな事になっていたなんて。
「遥は、事故で死んじゃうし、一寸先は闇って、本当なんだね」
「そうだね~私達も、気を付けよう」
「そうだね、00子はともかく、遥の様に、死んだら、終わりだもんね~」
「そうそう、こんな美味しいパフェも、食べられないし」
そんな二人の後ろで、パフェを頼んだ遥は、また複雑な気持ちになる。
「この前、遥のお母さんに会ったけど、地味で目立たない人だったのに
服もバックも、派手なブランド物で、飾り立ててて、吃驚しちゃったよ」
「そうそう、私も、高級車を運転してたの、見た事ある」
「人って、変わるんだね~」二人は、喋るだけ喋ると、出て行った。
その後で、嶺二が来て、ケーキと珈琲を頼み、お互いの見た事を話した後
二人とも、暗い顔で、そのカフェを出る。
自分達は、死んでしまったんだ、それは分かっていたのに
元の場所に戻れば、元の生活が送れそうな気がしていた。
その思いが、バッサリ切られて、やりきれない思いだけが残った。
二人は、駅から自転車に乗り、公男の家に向かって、猛スピードで漕ぐ。
まるで、嫌な事を振り切る様に、、、。
「ただいま~」「お帰り、町はどうだった?楽しめたか?」
「うん」「何だ、浮かない顔だな」公男は、二人の顔を見て言う。
「俺達には、もう、行く所は無いって事が、はっきりしたんだ」
嶺二は、茶の間に行って、茶を淹れながら言う。
「じゃ、今まで通り、ここで暮らせば良い、今度は、家族として」
何でそうなのかも聞かず、公男は、いつもの口調で言う。
「三人家族か~良いわね」遥が、やっと笑う。
「遥、、」暫くは、落ち込むだろうと思っていた、遥の言葉に、嶺二は驚く。
「何が有っても、陽気に行こうぜだよ」遥は、にっこり笑う。
「そうだった、何が有っても、陽気に行こう!!」嶺二も、そう言う。
翌日、今度は公男が町に行った。
その五日後、公男の家に、業務用ミシンが二台届けられた。
驚く二人に「二人も、ミシンが使える様になったら、楽しいぞ」
公男は、そう言って、使い方を教える。
それからは、早朝から昼までは農作業、午後から夕食まではミシン。
そんな生活になり、二人は、ミシンの扱いにも、直ぐに慣れて
いろいろな物が、縫えるようになった。
「二人とも、良い職人になるぞ」公男も、にこにこ顔で言う。
そんな二人の体は、23歳くらいになると、進化するのを止めた。
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