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そんな旅行も、作物の事が心配で、長い期間は行けない。
せいぜい、二泊ぐらいが、関の山だった。
戸籍では、兄妹という事になっているので
宿泊の時も、二人の関係は、兄と妹と書く。
だが、その旅行も、2年3年と続けると、もう行く所も無くなり
あまり気乗りしなくなって来て、自然消滅してしまい
農閑期や雨の時は、暇で仕方が無い。
田圃や畑、薪ストーブと風呂用の薪作り、仕事は多いが
レベルマックスの体力を持つ、23歳の二人は、あっという間に終わらせる。
そんなある日、暇だから、これで遊ぼうと
嶺二が、ゲーム機と、流行りだと言うソフトを買って来た。
本当なら、5人ぐらいで遊ぶと言う、ロールプレイングだったが
嶺二は、主人公の勇者に、遥は、その仲間の魔法使いになって、プレーする。
5人でも、なかなか攻略できないと言う、難しいゲームだった。
それを、たった二人でするので、直ぐにやられて、ゲームオーバーになる。
だが、二人は諦めずに、何度も挑戦する。
勇者と、魔法使いの、物凄くカッコイイ服装が、二人は気に入っていたからだ
「俺、勇者の服を作るよ」「じゃ、私も、魔法使いの服を作るわ」
二人は、久しぶりに、ミシンに向かい、コスプレ用の服を作る。
「出来た~」「私も~見て、腕は落ちていないわ」
「ああ、どっちも上出来だ」と、着てみた二人は、お互いに
「カッコイイ~」と、褒め合う。
「よし、これで頑張れば、うまく行くかも」と、二人は
勇者と魔法使いになり切って、敵をやっつけて行く。
二人が、そこまで熱中しているのは、余計な事を、考えたくなかったからだ
23歳のままで、一体、いつまで生きれば良いのかとか
お互いに、好きだと言う感情は芽生えているのに、結婚という二文字は
口には出来ないと言う事などだ。
戸籍上は、兄妹だから、法律的にも結婚は出来ないし、それを無視して
結婚しても、もし子供が出来たら、こんな親では苦しめるだけだ。
結婚しなくても、こうして一緒に暮らしているんだから
それで良いじゃ無いかと、思おうとしても
目の前に、好きな人が居るのに結婚も出来ず、子供も作れないんじゃ
ただ生きているって言うだけだと、悲しくなる。
その思いを、振り払うように、二人は今日もゲームに熱中する。
だが、その二人の命は、突然断ち切られる事になった。
二人が、揃って街へ買い物に行った時、飛び出してきた子供を避けようとした
大型トラックに、押し潰されるような形で、命を失ったのだ。
二人とも、首の骨が折れていた、これでは
いかに不老のスキルを持っていても、助かる事は無かった。
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