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それから慌ただしく精密検査をし、私はあっさりと退院した。
しかし由利くんは腕や足の状態など、色々と健康に異常をきたしていたのでリハビリと称し、しばらく入院した。
2022年12月31日、外泊の許可をもらい由利くんには時森家に遊びにきてもらった。
今は百々の子どもたちが家でバタバタと駆け回り、騒がしい場所である。
私の部屋はとっくに片付けられていて、新しい子供部屋になっていた。
由利くんが「星投げをしたい」と言ったので、私たちはすっかり静かになった河川敷に行き、年越しの瞬間に光る石を投げた。
どこか切なそうに、けれども憑き物が落ちたように苦い感情を噛みしめていた。
ーー新しい未来、2023年が始まった。
家に帰ってからは由利くんと居間に敷布団を敷いて、赤面しながら手を繋ぐ。
甘さに崩壊した顔面を見られることがなくて良かったと安堵し、眠りにつく。
朝になると百々の子どもとの激しいバトルと同時に目が覚めた。
こんなに騒がしい朝ははじめてだと由利くんは笑っていた。
それからまたリハビリを繰り返し、体調も安定して由利くんは退院することとなる。
入院中には色んな人が由利くんのところへ訪れる。
だが、その人たちとの交流で由利くんの表情は曇りっぱなしであった。
退院し、手を繋いで田んぼに囲まれた道を歩いていると、ふと足を止め、由利くんは空を見上げた。
「……お墓参り、行きたいな」
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