第十五話「Eternal First Love」

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*** 「じいちゃん、親父。来るの遅くなってごめんな」 たくさんの墓石が並ぶ山奥の墓地。 長年来ていなかった割に綺麗な墓石を見て、由利くんは影をつくる。 墓石の前にしゃがみ込み、じっと無表情に見つめた。 (お墓参り……久しぶりだな) 目を閉じ、目を合わせだした由利くんを見て私もまた同じ動作をする。 由利くんの心境を思うと胸が痛む。 ふと、脳裏に幼い頃の思い出が蘇る。 写真を見ないと思い出すことも出来ない祖母。 手を繋いで歩いた。 それ以外、何も覚えていない遠い遠い過去のこと。 (おばあちゃんのお墓、ちゃんと掃除されてるのかなぁ? おねーちゃん、雑だし……) 「じいちゃん、親父」 ハッと顔を上げ、由利くんに目を向けると真っ直ぐに墓石を見つめる横顔があった。 綺麗な佇まいに、吸い込まれるように魅入る。 「ずっと昔から好きだった人と、お付き合いをすることになりました。これから新しい道へ、二人で進もうと思います」 その言葉に、溢れ出す喜びが笑顔を作った。 迷い、仮面を被り、言葉を飲み込み、義務感に動き、自分が消えていく。 そうやって自分を殺した由利くんが、黒く咲いた百合と決別した。 終わりとはじまり。 ようやくノストラダムスの大予言、恐怖の大王は去っていった。 「時森 芽々です。やっと由利くんを捕まえました。お揃いの器、受け取っちゃったんで由利くんのことはいただいていきます」 「ちょっ、芽々!?」 「私の嫁……じゃなくてお婿さん」 想像しただけでヨダレが垂れそうだ。 「嫁……」 「これからはスーパーハニー、時森 芽々さんが一緒に幸せになりますのでご安心ください!」 「……ふはっ! なんだよ、スーパーハニーって」 「ダメ?」 「ダメじゃない。さすがは芽々だよ。最高に面白い」 「ぴゃああああ!!!?」 キラキラ眩しい笑顔が向けられ、目を焼かれる。 ( 溶ける! キュン死にはまだいやだー!) 「さて、あとは時森家に挨拶だね。行こっか」 立ち上がり、差し出された手から光が差し込んできた。 「うん!」 もう失うことがないように。 この奇跡を、一生離さないと誓い手を握り返すのだった。
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