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ふたご町の入り口となるバス停で、私は百々の強烈な手刀を頭に食らっていた。
「まったく、本当になんでも唐突なんだから! もっと計画性持てっての!」
「ぴゃあああ! ごめんなさいぃ!!」
私と由利くんは話し合い、ふたご町を去ることに決めた。
お互いすっかり意固地になっていたものをなくし、あらためてどうしたいかを考え、「心機一転したい」という結論にいきついた。
そのためにまず、過去を過去に変える時間が必要だった。
少し離れ、ゆっくりと二人で生きよう。
それでまた、ふたご町に戻りたくなったら戻ればいいと、そう話した。
「下心丸出しだもんね。 仕方ないのか」
ニヤニヤしながらおでこを弾いてくる百々に私は泣きっ面で吠えた。
「下心じゃないもん! めちゃくちゃピュアだもん!」
「嘘ついてんじゃないわよ!」
「ぴゃあああっ!! 麻理子様なにを!?」
ふたご町を去る私たちを見送りに、麻理子と奏、拓司が来ていた。
鼻息を荒くしながら細い腰に手を当て、麻理子は目くじらを立てる。
「言っておくけど、男なんてクズだからね! いくら黒咲くんとはいえ、男だからね!」
その発言にゾッと背筋が震えた。
(なんとなく麻理子様の人生見えてきたー! 発言の重みやばああ!)
麻理子はぶすっとしたまま、ぱっちり二重の目でじろりと私を上から下まで眺める。
「……女の子なら静夜の嫁候補になっても許す」
ツンデレが激しい麻理子に笑みがこぼれた。
「女王様の許可待ちってことで」
「頭が高い! 本っっっ当にめめりんはなんかムカつく!」
おとなしく見ていた奏であったが、限界に達したのか百々に続けて頭にチョップを落とした。
「奏ちゃんひどい……」
そうしてなんだかんだで笑っている私たちを、由利くんと拓司が苦笑いをして眺めていた。
「……女ってわかんねー」
「本当になぁ。人間不信になんよ」
「お前が言うな」
「ちょっ、由利くんひどない!?」
「はは、お互い様だって」
あり方が変わっていく。
友達の形も変化する。
ここにはいないが、倉田からたまに連絡があったようで由利くんが穏やかな表情で返事をしていたのを思い出す。
二人の仲はよくわからないが、あの倉田の性格を考えると彼なりの友情の示し方なのかもしれないと思った。
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