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お手紙
拝啓、 座敷童子様。
桜前線も北国にやって参りました。
最後に手紙を頂いたのは、疫病のためマスクの消費量が増えた頃でした。
私のこと覚えていらっしゃるでしょうか?
私はその頃、実家で経営していた焼肉屋が破産してしまい、資金繰りに奔走しておりました。あれから三年。やっと落ち着いたので手紙を書こうと思っていた矢先、座敷童子さんに出会った宿の記事が雑誌に載っているのを見つけました。
思い出の座敷が取り払われてピザ屋に生まれ変わるというので吃驚しています。しかも、写真には座敷童子さんが写っているではありませんか。誰も気づいていないようですが、私は気づきましたよ。
取り急ぎ筆をとってるため、文面が粗いですが勘弁してください。
工事が始まるまでにこの手紙が届くといいのですが、間に合わなかった場合は、それでさよならかと思うと胸が痛みます。
何年も音信不通で今さら何をと思われるでしょうが、生憎、私は先に述べた通り、焼肉屋の破産で大学を退学せざるを得なくなり、日々多忙な生活を送っています。せめて、一眼レフカメラで座敷童子さんの姿を撮りたいと願うばかりで身動きが撮れず、かといって、宿の工事を止める手だてもないということも事実です。
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