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第1話 とあるゲームクリエイター
稲村祈は、天才ゲームクリエイターとして持て囃されていた。
ゲーム世界に入り込んだ感覚を味わえる「フルダイブ」という技術を開発していた。まるでゲーム世界に異世界転移、転生したような錯覚を覚えるとヲタク界隈では有名な人物でもあった。
祈はある雑誌のインタビューでこう語っていた。
「僕は昔から身体が弱くてね。大人しくて繊細なタイプだったから、クラスにもなかなか馴染めなくて浮いていたよ。でも、このゲームはそんな子達の居場所になれる。現実が辛かったら、そこに逃げ込める感じだね。色んなキャラがいるから、アバターを何台も操るように仮想現実的な世界を楽しんでほしいよ」
しかし、このゲームは一般的に広く発売される事はなかった。祈が行方不明者になってしまったからだ。
そのうち、新しいゲームやクリエイターが生まれては消え、稲村祈の名前は忘れて去られてしまったが、彼が持っていた技術については、今も喉から手が出るほど欲しがる人間がいた。
萩野太一もその一人だった。
彼もゲームクリエイターで、さまざまなゲームを開発していたが、祈のようなゲームは作れていなかった。
「あぁ、俺も稲村さんみたいなゲームを開発したいですよ」
太一もそんな様な事を、あるゲーム雑誌のインタビューで語っていたが、今だに彼と会う事すら叶えていなかった。
もし、彼に会えたら一緒にゲームを作りたい。子供から大人まで皆んなに愛されるゲームを彼と一緒に作りたかった。
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