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日本で愛しまれているあの桜たちの大半はソメイヨシノだ。
ソメイヨシノはオオシマザクラとコマツオトメのようなエドヒガン系園芸種との交配種と言われている。
ソメイヨシノはもとは一本の桜の木だった。
オオシマザクラの台木とし接ぎ木によって殖やしている。
いわばクローンである。
どこで見ても変わらぬ美しさ、そりゃそうだ。いつどこでソメイヨシノを見ても我々が見ている木は一本なのだ。
春の知らせの一つ、桜前線の基準に使われるのも全国のソメイヨシノは皆同じ性質を持つからだ。
別れの季節の涙も、始まりの季節の涙も、大空襲での涙も、大震災の涙も。
全部、全部全部ソメイヨシノに重ねている。
ついあの時を思い出させ、花をちらしながら、私たちの瞳を潤す。
時を超えて人の感情をメモリー化する。全てを抱え込むくせに。
折れた枝や枝の切り口から幹を腐らせる菌が侵入しやすく、樹齢50年を超えた幹の
内部が腐理やすい手がかかる。
そんな一面もある。ソメイヨシノが嫌いだ。
𝒐𝒏𝒆 𝒇𝒐𝒓 𝒂𝒍𝒍, 𝒂𝒍𝒍 𝒇𝒐𝒓 𝒐𝒏𝒆
私たちはこれからもソメイヨシノに想いを重ねる。
私たちはこれからもソメイヨシノを守らねばならない。
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