少年の名は瑠衣

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少年の名は瑠衣

誰かに顔を触られた気がして、目を開けた! 目の前でじっと僕を見つめる幼い瞳! 「目が覚めた?」 コクンとうなづく!   「お腹空いてないか?」 またコクンとうなづく! 「ご飯の前にお風呂入ろうか?髪も手も泥だらけだぞ」 何も言わず僕の顔から目を逸らさない! 立ち上がってお風呂場へ行くと、バスタブにお湯を張った! 部屋に戻るとまだソファに横になっていた! 「おいで!」 差し出した手を掴んで立ち上がると僕の後から歩き出した! お風呂場へ連れて行く! 浴室の前で服を脱がす為に膝まづいた! 上に着ていたものを脱がそうと「手を挙げて」と言うと言われた通りに両手を挙げる! 裾を持って上着を脱がせると細い上半身には肋骨が浮いていた! ズボンを下ろして裸にして浴室の中へ入る! 湯をかけてやると、小さな肩をすぼめた! 髪に湯をかけて、泥を洗い流してやる。 「熱くないか?」 「うん」 「お湯に入って温まってから、洗おうな」 そう言うと、浴槽の淵に手を添えてお湯に足を入れた! その時始めて彼の背中が見えた! 白く小さな背中には、赤黒く細い筋がいくつも付いていた、赤くなったもの黒く変色したもの、まだ生々しい血の跡のあるもの・・・・・どれもが目を背けたくなるほど痛々しく禍々(まがまが)しい。 どう見ても虐待としか思えない! しかも、白く柔らかな尻タブにはいくつもの歯型が付いていた! クッキリとした、歯型! 両方の尻タブに大人の噛み跡! あまりの衝撃に息が詰まり、喉の奥が苦しくなった。 小さな身体を後ろから抱きしめ、肩に顔を埋めて泣いた! 言葉を発する事もなく、されるがまま立っていた! ゆっくりと身体を離し、湯の中に身体を浸からせる! 髪に湯を掛けながら、タオルを渡し顔にかかった湯を拭き取らせる! 浴槽から出て、椅子に座らせるとシャンプーを着けて髪を洗ってやった! 泥を流し柔らかな髪を優しく洗う! タオルでざっと拭いて、今度は手にボディーソープを付けて背中にそっと手を触れた! 泡だけを肌に触れるようにして洗う、足も手も泡をたっぷりつけて洗った! 前を向かせて首から胸の辺りを洗う、真っ白な肌には傷一つなく、スベスベとした肌は美しかった! 足の付け根の内腿辺りにも幾つかの噛み跡があった! 柔らかな場所をどんな奴がどんな意図で噛んだのか・・・・・ (おぞま)しい人間の顔をした悪魔の仕業としか思えなかった! 何も言わず立っている彼が愛おしく、濡れるのも構わず抱きしめた! タオルで彼を包み、髪も身体も拭いてやる! 着る物は私の物しか無い、仕方なく小さめのTシャツを着せてやった! テーブルの椅子に座らせて、ペットボトルの水を渡すと、ゴクゴクと半分ほど飲んだ! 喉が渇いていたのだろう、彼の前にパンと温めた牛乳を出してやる! 小さな声で「いただきます」 そう言ってパンを齧った、牛乳を一口飲んでまたパンを齧る! パンと牛乳を全て食べると「ごちそうさま」そう言った! ここへ来て初めて口にした言葉・・・・・ 「君の名前教えてくれる?」 「夏目 瑠衣(なつめるい)」 「瑠衣君って言うのか、僕は柊 都華咲(ひいらぎつかさ)、よろしくな!」 「はい」 「幾つ?」 「10歳」 「そうか僕は20歳」 「どこから来たの?」 「・・・・・」 「いい、いい、ここに居る?」 「・・・・・」 「いても構わないよ」 「・・・・・いいの?」 「うん、僕一人だからずっといて良いよ」 「・・・・・うん」
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