連れていかれた地獄

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連れていかれた地獄

母親が亡くなって、取り残された部屋に迎えに来たのは始めて見る父親と名乗る男の人だった。 男は瑠衣を森の中の屋敷へ連れてきた、重厚な門が静かに開き車が向かった先にあったのは人の倍ほどの木製のドア、両方に開かれた玄関の前で車から降りると、二人の女性が待っていた。 険しい顔に赤い口紅、着飾った服に高いヒールの靴、その横には優しい顔をした年配の女性。 「未知さん、彼をこっちへ連れて来なさい」 「はい!奥様」 「サッ!瑠衣様行きましょう」 「………」 瑠衣が連れていかれた場所は長い廊下の先にある、薄暗い部屋だった。 「此処があなたのお部屋よ」 女は父親と名乗った男の妻だった、瑠衣は彼女にとって引き取るいわれのない子、むしろ憎悪の対象だった。 彼女には息子が一人いた、息子の名は夏目 翼(なつめつばさ)。 彼女は自分の息子にも愛情をかけることはなく、いつもこの屋敷に放置していた。 屋敷へ来るのは週に一度………未知への支持を伝えるだけで、息子に逢うことはなかった。 瑠衣がこの屋敷に来て、彼女自身気が付かなかった加虐的な性癖が目を覚ました。 彼女は嫌いな相手を叩きのめすことに爽快感を覚え、性的興奮と快感を感じるサディズムへと変貌した。 瑠衣を虐待することで、内に秘めた欲望が燃え上がり身体中の血が熱くなる、瑠衣の白い背中を打ち据える度に燃え上がるような黒い炎………心臓はドキドキと高鳴り止められない欲求が自分自身を追い詰めた。 打ち据えられて倒れた背中にさらに鞭をふるう快感、気を失って床に這う身体………白い柔らかそうな尻が目についた瞬間嚙みついた。 肉をかみちぎるほどに噛んだ、赤く色づく歯形を無数につける。 白い尻に噛みつくたびに身体が震える、小さな体を反転させ足の付け根の柔らかな場所にも噛みついた。 小さな蕾を口に含み、動かない身体に顔を伏せて思いきりしゃぶった。 先端から血が滲み小さな蕾が紅く染まる……… 息を吐き自身の惨状を目の当りにして、我に返る………部屋を出るとそのまま立ち去った。 だがしばらくすると、胸に蘇る加虐の炎に逆らえない自分がいた。 屋敷に向かい瑠衣の部屋で虐待の限りを尽くし、我に返っては自宅へ帰る。 未知が部屋に入ると無残な姿で意識を失くした瑠衣が床に横たわっていた、思わず駆け寄り小さな身体を抱きしめた。 どうしてやることも出来ず、ただ部屋から聞こえる罵詈雑言と非情に打ち付ける鞭の音に耳をふさぎ、立ち去るのを待つしかない自分に嫌悪する。 翼はこのことをまだ知らない、学校から帰って来る頃には母親の瑠衣への仕打ちは終わっている。 翼は一人きりのこの屋敷に瑠衣が来たことが嬉しくてたまらなかった。 瑠衣を膝に抱き優しく抱き締める、瑠衣もまたそんな翼が好きだった。 背中に触れる度に痛む傷跡を翼にだけは気づかれないようにしていた。 それでも白いシャツに血が滲み、翼は瑠衣の背中の傷に気が付いた。 「瑠衣!これはあの人がやった?」 「………」 「瑠衣、今の僕はお前を守れない………だからここから出るんだ。そしていつか絶対お前を迎えに行く。それまで待っててくれるか?」 「翼………」 翼は未知に頼んで瑠衣を外へ連れ出した、何処へ行けばいいのかわからないがこの場所にいるよりはいい。 未知は翼に言われる前から瑠衣を連れてこの屋敷を出るつもりでいた。 女からは毎日未知に電話が入る、居なくなればすぐに気づかれる恐れがあった。 未知は瑠衣と共に屋敷を出た後、瑠衣とは違う道へ向かった。 後は瑠衣の運命に賭けた………そして未知も姿を消した。
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