迷い込んだ小鳥

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迷い込んだ小鳥

開け放たれた門から玄関までほんの数歩、両親が亡くなってから花を植える人も居なくなった。 雑草だけが緑を感じさせる狭い庭の隅に黒い塊があった。 昨日まではなかったはずの黒い物体………誰かが投げ込んだゴミか? 授業が終わって、友達と食事をして帰って来たところだった。 薄暗い庭の隅に小さな丸い塊! 目を凝らして近づくと、膝を曲げで(うず)くまる子供だった。 「ね、大丈夫?」 声をかけても動かない。 そっと手を伸ばして肩に触れた………小さな身体がゆっくりと倒れた! 慌てて抱き上げ玄関のドアを開け部屋の中へ連れて行く、片手で持てるほど軽く、すやすやと寝息を立て眠る顔は穏やかだった! だか明るい場所でよく見ると、髪も手足も泥がこびりついていた。 こんな小さな身体でどれほど歩いたのだろう・・・・・気を失うほど疲れているのだろうか! ソファに下ろすと、ぐったりと沈み込むように眠っていた! 暖かくなったとはいえ4月の夜はまだ寒い、触った手は凍えるほど冷たくて細い指も泥にまみれていた。 今時どこにも泥なんて見当たらない、山の中を歩いてきたのか? 毛布を掛け、シャワーを浴びてソファのそばに座った! 閉じた目を縁取る長く密集したまつ毛、小さくすっきりと通った鼻筋、ぽってりと柔らかそうな唇。 どれもが庇護欲を掻き立てる愛らしい造作をしていた。 もし迷子なら親御さんはどれ程心配しているだろう。 毛布の上にそっと手を乗せた、スースーと穏やかな寝息が感じられる。 部屋の照明を半分に落として、ソファにかけた手に顔を乗せて目を閉じた! 心地よい眠りに落ちていく!
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