48人が本棚に入れています
本棚に追加
迷い込んだ小鳥
開け放たれた門から玄関までほんの数歩、両親が亡くなってから花を植える人も居なくなった。
雑草だけが緑を感じさせる狭い庭の隅に黒い塊があった。
昨日まではなかったはずの黒い物体………誰かが投げ込んだゴミか?
授業が終わって、友達と食事をして帰って来たところだった。
薄暗い庭の隅に小さな丸い塊!
目を凝らして近づくと、膝を曲げで疼くまる子供だった。
「ね、大丈夫?」
声をかけても動かない。
そっと手を伸ばして肩に触れた………小さな身体がゆっくりと倒れた!
慌てて抱き上げ玄関のドアを開け部屋の中へ連れて行く、片手で持てるほど軽く、すやすやと寝息を立て眠る顔は穏やかだった!
だか明るい場所でよく見ると、髪も手足も泥がこびりついていた。
こんな小さな身体でどれほど歩いたのだろう・・・・・気を失うほど疲れているのだろうか!
ソファに下ろすと、ぐったりと沈み込むように眠っていた!
暖かくなったとはいえ4月の夜はまだ寒い、触った手は凍えるほど冷たくて細い指も泥にまみれていた。
今時どこにも泥なんて見当たらない、山の中を歩いてきたのか?
毛布を掛け、シャワーを浴びてソファのそばに座った!
閉じた目を縁取る長く密集したまつ毛、小さくすっきりと通った鼻筋、ぽってりと柔らかそうな唇。
どれもが庇護欲を掻き立てる愛らしい造作をしていた。
もし迷子なら親御さんはどれ程心配しているだろう。
毛布の上にそっと手を乗せた、スースーと穏やかな寝息が感じられる。
部屋の照明を半分に落として、ソファにかけた手に顔を乗せて目を閉じた!
心地よい眠りに落ちていく!
最初のコメントを投稿しよう!