case1 公妃様は転生ヒロイン?

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 私達の存在はユーザーにも他の登場人物にも知られてはならない。そのためキャラクターとしてはおろか、画面背景や裏設定にすら一切登場しない。  登場はしないが悪役令嬢家に確実に存在しているはずの、日々の食事やお茶会の菓子を提供する料理人や豪華なバラ庭園の手入れをする庭師、さらにはデートや悪企みに大活躍の正悪兼用便利スポット、あずま家の掃除人――そういった人達を思い浮かべていただきたい。  我々はモブ扱いにすらかからないタイプのモブだか、その存在が無ければゲーム世界が成り立たないため重要性は高い――いわばプロのモブなのだ。  ゲームではスキップされる日常場面の隙間時間を生かし、ヒロインを陥れる陰謀用のグッズ――すり替え用のプレゼントや小細工したテニスラケット、お茶会用のワライタケ粉末などを売り込んだり、取り巻き令嬢達を誘導してヒロインいびりの小ネタを提供したり……ありとあらゆる乙女ゲー世界において、行商人に身をやつし地道な活動を続けているのだ。
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