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私もその時はまだ青かったから、日々勃発する恋愛イベントや対決イベントのたびにノリカをこっそり応援していた。時にはノリカの知らぬところでヒロインにトラップを仕掛けた事もある。
いかにも怪しげな薬に見せかけたお砂糖や次の日の偽出題をこっそり通り道に置いたり――そう、ヒロインが玉の輿狙いで正義派ぶりっ子しているだけのちょいズル娘なら自滅必至だが、本当に正義感の強いフェアな人間ならおよそ引っ掛かることのなかったであろう手口である。言うならばヒロインフィルターだ。
いつの間にかヒロインとノリカの立場は逆転し、セコいヒロインとちゃっかり者の取り巻き達はフェードアウト。ノリカは正統派ヒロインとしてめでたくサルヴァノーヴァ公と結ばれ、私達の間には友情が芽生えたのであるーーそれからンンっ……年。
「前世じゃ貯金と乙女ゲームだけが趣味のアラサー社畜だったのに、今や夢の専業主婦ライフ通り越して超セレブ妻ライフ+二児の母ですものね……ありがたいことだわ」
言葉とは裏腹に、どこか浮かない表情がよぎるノリカ。こういう時は心の隙間に魔が棲みやすい。
ーーいい傾向ね。よし、もうひと押し……
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