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「撫子ちゃんはどうして名前が嫌いなの?いじめられていたの?」
「関係ないでしょ。何なの?ズケズケと」
「私はあるよ。皆に無視されてツラかったな。だから受験したの」
スミレは淡々と悲しかった日々の話しを始めた。
「何で私にそんな話しするの?普通、知られたくないじゃん」
「過去に負けたくないし、撫子ちゃんと仲良くなりたいから」
「だから……何で私?確かに私、変だけど、いじめられてはいなかったの。なんか……ごめん」
謝る私を見て、スミレが不思議そうに首を傾げた。
「なんで謝るの?あ、私が同類探しでもしてると思った?違うからね!知ってる?スミレの花と撫子の花って似ているって言われるんだよ。だから惹かれたの。私、花が大好きだから」
すぐに信頼できたわけじゃない。
ただ、気付いたら一緒にいるのが当たり前になって、私達の間には思い出が増えていった。スミレが私を肯定してくれる度に、知らない誰かの声なんてどうでもよくなった。
中高一貫の学校を卒業して、私は実家から通える大学に、スミレは他県の大学に進学した。
違う環境になるのは淋しかったけれど、距離が離れても新しい友達が増えても、一番の理解者がスミレなのは揺らがなかった。
――私、桜の花より梅の花の方が好き。
毎年恒例のそのセリフを六年聞いた。
でも、七年目は訪れなかった。
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