0人が本棚に入れています
本棚に追加
郊外のレストランに男が一人、入っていく。
ひどく疲れているように見える。
カウンター席に座った。
ウエイターが注文を取りに来る。
「目玉焼きを目玉抜きで」
妙な注文だと思ったがそのままオーダーを通した。
男は疲れていた。事業に失敗し、妻子にも去られ、ひとりぼっちだった。
残ったのは借金だけだ。これからどうしようか。
そこへ料理が運ばれてきた。真っ白な皿に白身だけの目玉焼き。
まるで何も載っていないただの皿のように見える。
男はその皿をしばらく眺めていたが、あまりの寂しさに突然泣き出した。
「お客さん、どうされました?突然泣き出すなんて気味が悪いや」
とウエイターが恐る恐る訊いた。
「そう言うと思って」と男は泣きながら言った。
「そう言うと思って黄身抜きを頼んだのです」
最初のコメントを投稿しよう!