竜の血族と竜族

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 どのようにしてウェイリスの兄を呼び出すか、又は連れてくるかを考えていた。既に翌日になってしまったが、どちらも意識が戻らないのだからどうにかする方法を考えなければならない。そう考えていると、グラゼルから念話が入った。  “ルイ様、ルイ様の番の方に似た男性が森に入ってきたのですが、どうします?”  “若いか?他に人はいるか?”  “1人です。若いですね。”  “そうか。例の家に誘導出来るか?”  “やってみます。”  ケディルオス侯爵令嬢を向こうの家に連れて行く事にした。家がある森へとウェイリスの兄が入ってきたらしい。  「ウェイ、きみの兄が例の家がある森へと入ったようだよ。」  「わかった。行くんだろ?俺も行く。」  「でも、俺もウェイも隠蔽魔法を掛ける。」  「うん。ありがとう。」  兄から認識されないという状況になるのに、ウェイリスからはお礼を言われる。気付かれると連れ戻されると思ったのかもしれない。直ぐにメイの所に行き、令嬢を連れて行くように頼んだ。  「お任せください。」  「だが、連れ出すことは禁止すること。一緒にいたいなら1度家に留まり、連れ出したいなら令嬢が目を覚ましてから共に行くと言ってからだと言うんだ。俺とウェイは姿を隠して行く。」  「畏まりました。では、先に行きます。」  「頼んだぞ。」  「お任せを。」  メイは令嬢を抱えて転移した。行き先はわかっている。俺とウェイリスも例の家に転移した。後はグラゼルが上手く誘導してくれるのを待つだけだ。俺とウェイリスは姿が見えない状態でいる。  暫くすると、グラゼルが上手く誘導出来たのかドアを叩く音がした。男性の声が聞こえる。  「―――兄上。」  「ウェイ、大丈夫だから。」  「うん。」  ウェイから兄との言葉を聞けば、間違いでなかったことに安堵した。漸く確認することが出来る。  「はい。どなたでしょうか?」  「俺は、ロウダン。人を探している。話を聞いてほしい。」  「とりあえず入りますか?」  「助かる。」  メイと話しているのを見るだけだと狂っているようには見えないが、魔力が明らかにおかしい事になっている。どうにか平静を保つようにしているのかもしれない。  そういえば、ベレルも転移してきたときは何処か変だと感じた。そういうことなのか?片方は意識を失くし、片方は狂っていく。それが出会ってしまった番が結ばれない結果なのかもしれない。その後、上手く結ばれることが出来たなら、変化するのだろう。俺は狂う前にウェイと結ばれたというだけなのかもしれない。  「どうぞ。」  リビングの椅子に座るように促したメイはお茶を用意して、自分とロウダンの分をテーブルに置いてから、メイはロウダンの向かい側に座った。  「それで、人を探しているとのことですが?」  「ああ。1人は婚約者候補の令嬢。もう1人は弟だ。令嬢はかなり前に行方不明になったままなんだが、彼女の実家は死亡届を出すつもりでいる。なんとしてもその前に令嬢を見つけたい。弟は最近行方不明になった。父も探しているんだが、見つからないままだ。学園では数人の行方不明が出ていると聞いている。貴族の子息や令嬢を狙った誘拐事件の可能性も考えたんだが手掛かりが全く掴めなくてな。」  「そうでしたか。実は1人女性を保護しているのですが、今は動かすことが出来ない状態です。女性が自ら出ていくことを望まない限り、ここから連れ出さないことを約束してくださるなら確認してもらってもいいですよ。」  「約束しよう。確認させてくれ。」  その瞬間、俺が前もって準備していた魔法が発動した。家全体を覆う魔法はウェイリスの兄ロウダンが約束した条件に反して、令嬢を連れ出そうとしてもドアが開かない、家も壊れないという状態へとなっている。勿論、純粋な竜族であるメイには、竜の血を僅かでもその身に流れているからといって勝てるわけもない。  「どうぞ。こちらです。」  俺とウェイも令嬢の寝ている部屋に行った。部屋へと入ったロウダンは令嬢を見た瞬間に飛びつくように抱きついた。けれど、令嬢が動くことはない。息はしているが意識が戻らないのだ。  「何故!何故だ!彼女に何をした!」  「私は保護しただけです。看病をしていたのに、私を責めるとはどういうことです?」  「煩い!お前が何かしたのだろう!?彼女を俺のところに来させないために!」  「私が犯人だというなら、何故誰かに会わせるんですか!」  「クックックッ。犯人だと自供したな?彼女は連れて帰る。」  「無理ですよ。さっき約束したではないですか。一緒にいたいなら、貴方がここにいるべきです。」  勝手にロウダンは令嬢を抱きかかえ、家のドアから外に出ようとした。だが、ドアが開かなかった。何故あの言葉でメイが犯人だとなる?やはり狂っているというのは間違いではないらしい。  「誘拐事件はこういうことだったのか。ははははは。私も誘拐された1人ということなのだな。だが、他の者たちのようにはいかない!」  魔法を家の中で放つロウダン。俺は結界を張り、攻撃からウェイリスを守る。メイは交わしつつロウダンと令嬢の様子を見ている。その時だった。令嬢が苦しそうに呻き出す。  「どうした?ペネライカ嬢?早く!ドアを開けろ!医者に見せなければ彼女が死んでしまう!早くしろ!!」  「医者に見せても女性は目を覚ましません。実は貴方を拒絶しているのではないですか?ほら、今まで落ち着いていたのに、貴方が連れ出そうと抱きかかえてから苦しみだしたではないですか。」  おいおい。煽ってどうすんだよ。やっぱりメイも紅竜だよな。特徴が性格に現れている。好戦的なんだよな。
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