竜の血族と竜族

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 暫くしてネリューズとベレルが服を着て出て来た。ネリューズを離さないとばかりに腰を抱くベレルは独占欲丸出しだ。  「お待たせしました。」  「ここでゆっくりと話している時間はない。移動する。掴まれ。」  「失礼します。」  丁寧な言葉遣いをするベレルが珍しいのか、ネリューズが目を見開いてベレルを見た。俺の肩に手を置いたベレルはしっかりとネリューズを抱き寄せている。俺もウェイリスの腰を抱き寄せウェイリスも俺の服を掴んでいる。そのまま帝国の辺境地でもある海沿いのある家へと俺は転移した。  「ここは?」  「各地に家を持ってるうちの1つだよ。先ずは話をしよう。」  姿を見せたセロウスがお茶の準備を始めた。軽食のサンドイッチも用意するという手際の良さだ。  「お待たせしました。」  「ありがとう。」  「ありがとうございます。」  ここでもまた、ベレルは執事姿のセロウスに丁寧にお礼を言う。ネリューズはベレルを見て驚きの表情ばかりしている。  「ウェイ、どうなってるんだ?」  「ネリュは何をどこまで聞いた?」  「いや、何をどこまでと言われてもな。全くと言っていいほどさっぱりだ。ただ、俺は戻らないほうがいいということだけは理解した。」  「えっ!?ベレルは自分のこと話してないのか?」  「自分のこと?俺はベレルの出自なんか知らないぞ?」  「えっ!?そこから!?」  俺は流石紅竜だなとある意味感心した。同時に呆れもあったが。何も説明せずに番を手にするのは、ある意味凄いことだ。自分のことを何も言わず、信じてついてこいてことだからな。それも生涯離すこともない。  「俺から話した方が良さそうだな。ネリューズ、話すのは初めてだな。」  「そうだな。」  「先ずは、ウェイが俺のことを人族だと思っていたことから、ネリューズも同じことを思っているだろうと思うんだが、合ってるか?」  「ああ。そうだな。違うのか?」  「俺もそうだが、ベレルも人族ではない。人族の血は一滴も流れてない。」  「は?どういうことだ?」  「俺もベレルも、執事をしているセロウスも竜族なんだ。」  「竜、族?」  俺が先ず種族を言わないと話が進まないと思い、ネリューズに伝えたんだが、ネリューズは瞬きを繰り返し、俺とウェイリスとベレル、セロウスに流れるように視線を動かしていく。  「そもそも、ウェイのように竜の鱗を身体に持つ人がいるんだ。どうやって竜の血を人の中に入れたのか疑問に思わなかったか?」  「そう言われると、そうだな。人の姿になっている竜がいるからってことか。って、ベレルも竜!?」  驚くのは今なのか?ベレルも竜族だと言ったのは今じゃないはずなんだけどな。  「竜族には番がいる。というよりも、おそらくはレイニトーラ王国の民の殆どが番がいると思っていい。ただ、番が何処にいるのか、誰なのかの判別が出来なくなっている者が多いのかもしれないな。」  「番?」  「伴侶と思えばいい。こいつでなければダメだと本能で感じる相手。」  「・・・・・・。」  今度はネリューズが考え込んだ。何を考え始めたのかわからないが、話を続けていいのか?ウェイに視線を向けると小さく首を振った。待たなければならないということか。移動してからの話で正解だな。向こうで話すことになっていたら、考え込むネリューズに時間を取られて、2人が見つかっていたかもしれない。  「ウェイの番がレクス?」  「そうだな。」  少ししてネリューズに聞かれたウェイリスが頷いた。次にネリューズはベレルに視線を向けた。  「俺はベレルの番ってことか?」  「だからそう言ってるだろ?」  「いや、言われてない。」  「あれ?言わなかったか?」  だろうな。言ってないからネリューズが知らないんだ。ネリューズは頭が悪いわけじゃない。飛び抜けて良いとは言わないが、それなりに学園での成績が良かったことから理解力は悪くないと思っている。そして、紅竜は適当な部分がある。基本楽天的で好戦的な種なんだよな。  「続けるぞ。竜族は番と契を結ぶ。性行為をすることで、竜族の精を番の内部へと入れることで互いの魂を結ぶものだ。」  「えっ!?」  「これによって他者との性行為は死を意味する。」  「あー。戻れない理由ってそういうことか。」  「主な理由ではある。だが、戻れない理由は他にもある。おそらく、誘拐事件の犯人とされてる可能性が高い。しっかり調べてから犯人とするなら、公的には犯人とはされないだろうけどな。」  今度はネリューズの眉間にシワが寄った。忙しいやつだな。  「ごめんな。俺の兄が狂ったせいで騒ぐかもしれない。兄はペネライカ嬢を連れて行ったんだ。」  「そういうことか。ウェイのせいじゃない。謝ることはないからな?」  「ありがとう。」
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