竜の血族と竜族

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 邸に帰ると最近多くなった他貴族の訪問と被ってしまった。理由は俺たち兄弟の婚約者に自分の娘をと望むからだ。本当に面倒である。バッタリと会ってしまえば売り込みが長々と続く。だから俺は訪問時間を避けていたんだけど、今日は訪問時間が遅かったらしい。  「ウェイリス様、本日の夕食はケディルオス侯爵家との食事会に急遽変更になりました。」  「そうか。ケディルオス侯爵家か。」  ケディルオス侯爵家はあまり目立つことをしてこなかった家だ。だからなのか、どんな家なのかを知る機会もなく、ただ悪くはないという程度である。  婚約者がいないからなのか、父は他の家との接点を持ち、どんな家族でどんな子供なのかを知る機会を儲けようと思ったのかもしれない。  お茶会などもあるにはあるけれど、俺も兄も参加することは消極的だからなのかもしれない。父は訪問の申し入れのある貴族を接欲的に招いているように思う。俺の相手ではなく、兄の相手を見極めているようだけど、ついでとばかりに俺にもアピールをしてくる貴族もいるから面倒でしかない。  俺は思う相手がいると言って毎回逃げている。嘘ではないから父も俺の方は消極的だ。  着替えて食堂へと向かった。そこには既にケディルオス侯爵、侯爵夫人、侯爵令嬢の3人がいた。確かケディルオス侯爵には娘が2人いたはず。今日来ているのはどっちだろうか。俺の方にも来られても困るから会話は必要最小限にするつもりではある。  「ウェイリス、来たか。」  「はい。先程帰りました。」  「そうか。」  父から話しかけられ、そのまま自分の席へと座る。父、母、兄とそれぞれ向かい側には侯爵、公爵夫人、侯爵令嬢と座っている。俺の向かい側には誰もいないことにホッとした。俺は一番端の妹の隣に座る。  ケディルオス侯爵は狼の種族特性を持つ。侯爵夫人は兎の種族特性を持っている。令嬢は母の種族特性を受け継いだのか兎の種族特性を持っていた。  「ケディルオス侯爵、食事会を受け入れてくれてありがとう。少しでもお互いを知ることが出来ればと思う。」  「こちらこそ、お招き頂き、ありがとうございます。」  父とケディルオス侯爵が挨拶を交わす。そうして少しずつ会話をしていると、料理が運ばれてきた。兄も侯爵令嬢と食事の合間に少しずつだが会話をしている。礼儀作法も問題なく、人柄も悪くはないという印象を受けた。それは侯爵も公爵夫人も同様だ。これが本来の姿であれば良いんだがな。義姉となる相手なら俺も妹も多少なり関わりを持つこともあるだろうし。  この日の食事会はケディルオス侯爵家の良い印象を受けて終了した。兄も両親もケディルオス侯爵令嬢を婚約者の候補の1人に入れたらしい。まだ決定ではないのは他の令嬢も見たいことと、今後変化が起こる可能性もあるからだと思う。ケディルオス侯爵令嬢は姉の方で、ペネライカ嬢という。妹がテリオント嬢というらしい。  食事会から半月後、噂が流れ出した。ペネライカ=ケディルオス侯爵令嬢が、多くの子息と関係を持ち遊び歩いているというものだった。ケディルオス侯爵家からの手紙にはペネライカ嬢は外出禁止となっていて、婚約は出来れば妹のテリオント嬢をと書かれていたらしい。  「やはり問題が出て来たな。さて、噂が真実なのか調べる必要がある。ロウダン、お前は気になる令嬢はいるのか?」  「そうですね。ペネライカ嬢には良い印象を受けていました。話も合いますし。詳細まで調べてから改めて考えたいと思います。テリオント嬢とは噺も合わないので、テリオント嬢は婚約者の候補には入れないで欲しいですね。」  「わかった。詳細まで調べよう。何か裏があるかもしれないからな。」  ある日の夕食後のティータイムで父と兄の話を聞いて俺も思った。ケディルオス侯爵家が何度か訪問に来た際、姉妹揃って来ていたこともあった。印象としてはおっとり穏やかな姉に対して、妹は積極的に話をするタイプだった。隔世遺伝なのか妹のテリオント嬢は猫の種族特性を持っていた。マナーはどちらも問題はない。気にするべきは性格だと思っていた所に噂を耳にした。  噂のようなことをするように見えなかったペネライカ嬢。何か裏がありそうだと思えた。だからこそ父も兄も調べることにしたのだろう。  俺に関わって来ないならそれでいい。俺には思う相手がいる。家を継ぐわけではない。どんな仕事をするか早めに決めることと、レクスとどうにか仲良くなる事を考えなければ。
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