竜の血族と竜族

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 レクスとの関係が変わらないまま、父から詳細がわかったと知らせがあり、俺は急いで父の執務室へと行った。そこには既に兄が来ていた。  「ウェイリスにも聞いてもらいたい。」  「わかりました。」  部屋に入った所で父に言われ頷くと、俺は先に来ていた兄の隣に座った。父は向かい側に腰を下ろす。  「ケディルオス侯爵家だが、関わりを考え直した方が良さそうだな。これを見てくれ。」  父から報告書を手渡された兄が読み終えたものから俺に渡してくれた。1枚1枚捲っていくと、書かれている内容に怒りが込み上げてくる。  「父上、これが事実だとすれば、ペネライカ嬢は―――。」  「ああ。あの食事会以降、1度も見ていないことから、おそらくは、手遅れだろうと思っている。」  俺も最後まで読み終えて、ゆっくりと息を吐き出す。ペネライカ嬢が助かる可能性はかなり低い。既に生きていない可能性の方が高いと思える内容だった。けれど、もしかすると、何処かで生きているかもしれないとも思いたくなる。それだけペネライカ嬢は人柄が良いのだ。次代の公爵夫人として相応しく思えた人と言える。出来れば、僅かな望みで生きていて欲しい。  「父上、可能な限り、探させてください。」  「―――良いだろう。今まで会った令嬢の中ではペネライカ嬢が1番最適だと思えるからな。」  「はい。私も出来れば彼女が良いと思っています。」  兄はペネライカ嬢を探すらしい。父も捜索の許可をした。俺も手伝えることがあれば手伝おう。  「何か分かれば連絡します。学園の方で情報が入るかもしれません。」  「そうだな。ウェイリスも頼んだぞ。」  「はい。」  少しでも情報があればと思い、父と兄に伝える。頼りにされた俺は気合が入った。俺の出来ることは多くはないかもしれない。それでも、出来ることはしたい。  学園で耳に出来る情報がないかと今までよりも歩き回った。けれど、ペネライカ嬢に関係すると思われる情報は何処にもなかったのだ。そういえば、と俺はネリュの言葉を思い出した。あの時、ネリュは無差別に貴族の子供が攫われていると言っていた。もしや、と思うが、犯人の目星も犯人に関わる情報が何一つとしてないらしい。それならば、関係するか分からなくても、可能性としてあるならと父に話すことにした。  「父上、今貴族に子どもたちが攫われているという話を耳にしました。ペネライカ嬢が攫われたという可能性はありますか?」  「ふむ。そういえばそういった話を聞いたな。可能性がないとは言えないか。だが、犯人に関わる情報がない。」  「攫われたという子どもたちの共通点など、性格や好みなどを調べることは出来ますか?」  「なるほど。やってみよう。話してくれてありがとう。誘拐事件との関わりをすっかり忘れていた。急ぎ調べる。」  俺は話し終えると、一礼して部屋を後にした。帰って直に父に話に行ったため、これから着替えて夕食となる。その前に父は調べるための指示を出すだろう。  ペネライカ嬢に関することは手掛かりと言えるか分からなくても、情報収集を手伝えてはいると思う。問題は、レクスのことだ。学園に入ってから1年以上経った今でも何の進展もない。学園は3年が義務。残り2年もない。どうすれば普通に会話だけでも出来るようになるのかすらわからないままだ。  2年目が半分過ぎた頃、ネリュの様子が何時もと違うことに気付いた。もしかするともっと前から違っていたのかもしれないと思うと、自分の周りに向ける観察眼が良くないとさえ思えてきた。  「ネリュ、何があった?」  「―――はぁ、確定か。まぁ、ウェイに隠す気はない。この後に時間はあるか?」  「お前の話を聞く時間なら充分あるな。」  「それなら、一緒に来てくれるか?」  「いいぞ。」  今日の授業はもう終わっている。俺は迎えの馬車にネリュと用事があると伝えて1度帰ってもらった。俺はネリュと一緒にデノッド侯爵家の馬車に乗り移動した。どのくらい揺られていただろうか。侯爵家の馬車でも揺れが酷かったことから足場の悪い道も通ったらしい。暫くして馬車が停まった。降りるネリュに続いて降りると、目の前には平民が暮らす大きさの家があった。
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