竜の血族と竜族

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☆  俺は攫われそうになる想い人を助けた。そのまま自分の住む場所に連れて行ったが一向に目を覚まさない。どうするか少し悩んだ末に、目覚めさせるのに1番効率が良い方法を選ぶことにした。  学園で彼からの視線を感じることは何度もあった。ただ、俺はあまり他人と会話をしなかった。俺の見た目を気に入ったと話しかけて来る人は何人かいた。その度に断った。面倒でしかない。誰でも良いわけじゃない。俺は彼を見た瞬間に、全身に電撃が走ったかのように、コイツだと本能で感じ取った。  それからはどうすれば彼とだけ接点を持てるか考えたが、彼は貴族であって、自由が少ないようで1人になることもなく、声をかけることすら出来ないままだった。そんなある日、彼の魔力がおかしい事に気付き、気付かれないようにそっと後を追った。  それが貴族の子供を狙った誘拐事件の現場だとも知らず、様子を伺っていると、赤髪の良く知る魔力が彼を助けた。だが、赤はそのまま彼を置いて去っていった。そこまでしたのに置いていくのかと怒りも覚えたが、もしかするとこれはチャンスでは?そう考えて増えた人間たちを倒すと、彼は意識を失っていた。  このまま帰したくない。そんな思いもあって俺は自分が生活している家に彼を連れて来たのだ。学園があるから、従者に昼間は頼んで、夜は俺が様子を見ていた。けれど、数日経っても目を覚まさない。  “ルイ様、このままでは彼は―――”  “わかってる。身体を繋ぐ。彼には1番安全で確実な方法だ。暫くは離れられない。周囲は頼んだぞ。”  ““畏まりました。””  従者たちと念話で話し、俺は彼の服を全て脱がせた。本当なら同意の下でしたかった。意識がないままでは同意を得る事も出来ない。拒絶だけはされたくないな。そう思いつつ、彼から頻繁に向けられていた視線の意味に希望を抱くしかなかった。  自分の服も脱ぎ、彼の内部を魔法で浄化して潤滑油を出す。そうして少しずつ解していった。そこに自身を埋め込んでいき、肌が触れ合うと全て自身が温かさに包まれた感覚に歓喜する。それも相手はずっと求めていた人だから余計だ。  ゆっくりと動き出し、最初だからか呆気なく彼の最奥へと熱を解き放つ。自分の全てが彼と混じり合うかのように繋がっていく感覚に漸くだと思い、彼の意識へと潜るために繋がったままで自分たちを包むように毛布に包まった。彼が冷えてしまうと大変だからな。  覆いかぶさるようにして抱きしめ、魔法を発動した。そうして俺は彼の、ウェイリスの意識へと潜っていった。  森の中?彼は、ウェイリスはどこだ?  歩き続けて漸く見つけたウェイリスは湖の畔にある大きな木に背を預けて座っていた。視線の先は湖だった。  「ウェイリス。」  「!?―――レクス。どう、して?」  戸惑いは彼の意識の中にいることもあって、声に出してなくても俺に流れ込んでくる。  「迎えに来た。」  「―――俺は、戻れない。」  「どうして?」  「だって、戻ったら―――」  不安、悲しみ、苦しみ。そんな感情ばかりが俺に流れ込んできた。そして目を覚ませば戻らなければならないという恐怖。  「大丈夫。俺がずっと側にいる。」  「でも、俺は―――」  「俺ね、ずっとウェイリスが好きだった。今もそれは変わらない。いや、違うな。今は前よりもっと、ウェイリスを愛してる。」  目を見開いて俺を見るウェイリス。 ―――こんな幸せな夢を見ていられるなら俺の選択は間違いじゃなかったんだ。  そんな言葉が頭に響いた。夢?夢だと思い込んでるのか。  「夢じゃない。誰かに攫われそうになってた君を俺が助けたんだ。目を覚ましたら怒られるかもしれないけど、でも、今誤っておくよ。目を覚ましたときの状態は俺がどうしてもって思ったことだから。同意がなかったことだけごめん。」  「同意?何言ってるんだ?俺、レクスなら何されたっていい。他のやつは嫌悪感しかないけど。レクスなら何も問題ない。でも―――」  ウェイリスが抱えている不安、恐怖を取り除いてあげられたらウェイリスが目覚めるのでは、と思うけど。  「何が不安?何が怖い?どうしたい?俺が叶えてあげるから。」  「ありがとう。そう、だな。夢だし。全部話しちゃってもいいか。」  寂しそうに笑みを浮かべながらウェイリスは少しずつ話してくれた。  「俺、公爵家の次男でさ。俺が学園に入ってからだけど兄の婚約者を本格的に探してたんだ。俺は好きな人と生きていける。生活さえ出来るなら問題ないって言われて育ったから。後継は兄だからってずっと自由だった。でも、」  そこまでは懐かしさが勝っていたのに、突然不安と恐怖が塗り替えていく。  「俺ね、ずっとずっとレクスが好きで、誰とも話さないレクスとどうすれば会話が出来るかって悩んでた。」  良かった。ウェイリスも俺を思ってくれていた。それは繋がりで証明できてはいても、言葉にしてくれるのとでは大きく安心感が違う。  「兄の婚約者候補が1人に絞られたけど、貴族の子どもたちを狙った誘拐事件で候補の令嬢がいなくなったんだ。俺も探すための手伝いをした。でも、手掛かりはなかった。」  なるほど。誘拐事件が起きていたわけか。そこまで俺は知らなかったな。というより関心がなかったと言うべきか。
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