9980人が本棚に入れています
本棚に追加
羅依と二人でホテルに着くと、兄と待ち合わせのラウンジへ向かう。今日はタクが主役で、緒方先生はご親族。
羅依はタクの会社関係者で友人、兄も友人、私もタクの友人枠で招待してもらっている。
「お兄ちゃん」
私と羅依の珈琲が来るまでに兄の姿が見えたので、小さく呼んで手を振ると、何のリアクションもしないままに兄が私達のテーブルまで来て私の隣に座った。
「お兄ちゃんもシルバータイ?似合ってる」
「男は選択肢がない。ピアス、揃いで作った?」
「うん」
「いいですね。それが似合う羅依がすごいと思う」
ずいぶん言葉が砕けた兄に羅依も満足そうに頷いている。3人で珈琲を飲んだあとチャペルに移動しようとすると
「一樹、スマホ。才花と並んで」
羅依が長い腕を兄に伸ばした。
「小松さんに送っておいてくれ」
「私にも送って、お兄ちゃん」
私は父の連絡先を知らない。羅依の気配りに感謝して兄と腕を組むと、兄がフッと表情を緩めたのが分かった。
「羅依にはかなわないです」
「お兄ちゃん、羅依には敵おうとしないのがいいんだよ」
最初のコメントを投稿しよう!