夢をみる

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オーバーヘッドシャワーって、こんなに真上から全身にお湯を浴びることが出来て気持ちいいんだ。海外のホテルで、固定のシャワーヘッドが使いづらいと感じるのとは全く違うな。 お湯を止めて、ベンチに座ると打たせ湯ボタンを押してみる。ああ…すごい贅沢なんだけど…ここは部屋のシャワールームだから、バスルームは別にあるなんて。そりゃそうよね。お金持ちのお客さんしか登録がないだろうから。 私が今夜の仕事を登録したのは、1時間5万円で女性を自宅に派遣するところで、厳しく個人情報を調べられるが、それは男性側も同じこと。もちろん互いの情報を公開されるようなことはない。どちらも心身ともに危険を冒したくないという共通意識があっての利用だ。 私だってこんなことをしたかった訳ではない。だけれども、自分の中の最優先事項を優先するための手段だ。 世界50ヵ国で予選が行われるヒップホップの世界大会。国内予選を通過して本選に参加するのは5回目だ。国内予選を通過、というのが私の認識だが、スクールの人たちは‘優勝おめでとう’と言ってくれる。 だけど違うの。あのキラキラした世界の舞台で万年入賞者として、ステージ上で優勝者へ拍手を送るのは去年で終わりにしたい。一度はあの真ん中に立ってみたいと思うんだ。 一方で、毎回渡航費を工面するのには苦労する。去年はタイで開催されたのだが、今年はイギリス。滞在費も含めると倍以上の費用がかかる。イギリスでの開催は分かっていたことなので1年間準備はしてきたけれど、レッスンを疎かにせず確実に国内で勝つためには、アルバイトばかりしていられなかった。
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