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黒シャツと黒スラックスの男性にタクが
「一樹、緊張すんなよ。大丈夫だって」
と肩から体当たりしてから
「失礼しまぁす。ご無沙汰してます、小松さん」
と小走りに奥へ進んだ。
「拓史も一緒だったか。相変わらず通る声だな」
「一樹がなかなか会ってくれないんですよね。だからこうして会えるのはテンション上がる」
どちらかと言えば、いつも上がってるよ…タク。そして、相手の声は高くもなく、低くもなく、柔らかい声に感じる。
そう思いながら、左膝への荷重を間違えないようにゆっくりと前へ進む。
「何割、かけても大丈夫なくらいですか?」
男性はケガも知っているのだろう。私の足取りを見ながら言葉を選ぶ様子で聞いてきた。
「…7、8割は…真上からなら普通に全部乗せても大丈夫です」
「歩くとか、膝を使った体重移動を伴えば7、8割ということですね?」
その通りだと頷いたとき広い部屋へ到着し、4人の視線を一斉に感じた。
「はじめまして、才花さん。小松です。どうぞ、掛けて。羅依も」
「はい。お久しぶりです、小松さん」
「こんな風に会うなんて、一樹や羅依たちが好き勝手してた頃には思いもよらずってやつだな。いや…ついこの間までも想像出来なかったよ」
小松さんは目尻のシワを深くして私を見た。
「会えて嬉しい。来てくれてありがとう。会いたいと思ってくれた父親とは違うかもしれないが…今日のこの時間に感謝する」
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