夢をみる

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私、大島才花(おおしまさいか)はプロダンサーとして活動はしていないけれど、アルバイト程度の仕事は受けることがある。プロになった知り合いも多い。だから芸能人と繋がりのある人も多く、そういう人たちからこの仕事を伝え聞いたのだが…まあいいか、もう二度と登録することはない。 「ありがとうございました」 「お疲れ様でした」 これで終わりだ。車から降りてハイツという名前の古いアパートの2階への階段を音を立てないように上がり、バッグから手探りで鍵を取り出しながらアパート前を見下ろすとまだ車は止まっている。次のお迎え待ちだろうか? 暗い部屋に電気を点けてから、今日受け取った30万円を畳の上に並べる。あの男はいつもこうして女性を抱くのだろう。だから料金設定までよく知っていたんだね。立場によっては本当に快適なシステムだもの。お金持ちや有名人ほど不自由なこともあるのだろう。 これで航空券と宿泊ホテルの予約が出来る。これも慣れた作業だからそれほど時間はかからない。今やってしまおう。 スクールの先生がアメリカ人なので子どもの頃から英語だけは一生懸命勉強した。教わるのはダンスで先生も踊って見せてくれるし、先生も日本にいるうちにカタコトの日本語は話せるようになったから必要か?と言う人もいたけれど、私は先生の体感や表現をダイレクトに感じたかったから、英語だけは習得した。それに、世界大会を目指すなら周りとのコミュニケーションに英語は欠かせないツールだから。
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