クマリン

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クマリン

「おい、あっこ見てみろよ。めっちゃ桜綺麗やぞ」 「ですね……」 「いや、反応薄ない?」 「僕……あんま桜好きじゃないんすよね……」 今、僕は中学野球部時代の1個上の先輩と一緒にいる。彼は、中学生当時から先輩面をしない気さくな人で、本音が言い合える良い関係。だからと言って、別に尊敬したり憧れたりとかは無いかな。  今日は車を買ったからとドライヴに誘われている。 先輩は初ドライヴの嬉しさも相まってか、運転しながらテンション高めに言い、ハザードを点滅させて車を路肩に停めた。 だが僕は、花粉症で気分が重い事もあってか変な返しをしてしまった。 「桜嫌いとか日本人として疑うレベルやぞ?」 「まあ、ちょっと嫌な感じやな程度なんですけど……」 「花鳥風月ってあるやろ、自然を愛せない人間は……」 「いやいや、ちょっと待ってください!理由を聞いてくださいよ。クマリンって知ってます?」 「クマリン?」 先輩は一瞬考えた後、目がキラリと光った。 「それあれやろ?ゆるキャラやろ?」 僕は先輩の発言を聞いて、先程の目の輝きはボケが思い付いたという顔やったんやなと理解した。 「いや、クマモンじゃなくて……」 「で、そのワセリンがどう関係あんねん」 僕は突っ込むのも面倒になり、軽く溜め息をついた後、話す。 「クマリンって言うのはですねぇ……」
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