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第1話 猫の世界と妙なる小鳥(3)
朝食を終えたルイフォンは、ミンウェイに用意してもらった服を持って、メイシアの部屋を訪ねた。
「おい」
ノックなしで扉を開ける。理由は簡単。メイシアの反応が面白いからだ。彼女が扉に鍵を掛けられることに気づくまで、これは続けよう、とルイフォンは思う。
「きゃっ」
唐突な呼びかけに、窓辺で外を見ていたメイシアは可愛らしい悲鳴を上げた。彼女が長い髪を舞わせて振り向くと、開け放された窓から桜色の花びらが髪飾りのようについてくる。どうやら今が盛りの桜に見とれていたようだ。
彼女はルイフォンの姿を確認すると、顔を真っ赤にした。
「おおおおはようございます。昨日は失礼いたしました」
声が裏返っている。
酔いつぶれた後、ルイフォンに部屋まで運んでもらったことをミンウェイから知らされたためだろう。
「あれは俺も悪かった。お前があそこまで弱いとは思わなかった」
ルイフォンは、からかってやるつもりだったのだが、素直に謝ってしまった。耳まで赤くしてうつむく姿が、さすがに可哀相に見えたのだ。彼は別に嫌われたいわけではない。
「特に予定は、ないよな?」
こくりと頷く彼女に、彼は持ってきた服を渡す。
「これに着替えろ。俺に――」
ついて来い、と言おうとして、少し考えて続ける。
「デートしよう」
にやり、と猫のように目が細まる。
「え?」
「だから、デート」
「?」
「俺の世界を見せてやるよ」
メイシアは戸惑いながら渡された服を見た。今、着ているものより、かなり質の落ちる品だ。ルイフォン自身もあまり良いものを身につけていない。
「これから行くところは、あまり治安が良くないんだよ」
ルイフォンの説明に得心のいったメイシアは、服を持って続き部屋の寝室へ向かった。
「ここで着替えないのか?」
「勘弁してください」
「綺麗なのに……」
残念、と呟くルイフォンをメイシアはきっぱりと無視した。
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