列車の旅・奇談 ~ぐるぐる~

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 ヒサシが乗った単線の列車は走っていた。  のどかな田舎(いなか)の海沿いを走りつづけていた。  一泊二日の旅の終りに乗っただけ‥‥のはずだったのに……。  やがてトンネルに入った。  そんなに長くはなく、十秒ほどで抜けられるトンネルだった。  が、彼は、疲れていたためか、直前で、ウト‥‥ウト‥‥した。  ハッと目を開けたのは、後ろでドアが開く音がしたからだった。  振り向くと、丁度トンネルから抜けた時で、車内販売が立っていた。  その販売員が実にチャーミングな女性だったので、ヒサシは何か買おうと声をかけようとした。  その時、車内放送で車掌が、次の駅を告げた。  なかなか良い名称だったので、ヒサシがフッと正面を見てから、再度、後方を見た。 「あれ?」  そこには、車内販売はいなかったのだ。 「そうか‥‥。もう次の駅に着くから、急いで戻ったかだ‥‥」
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