列車の旅・奇談 ~ぐるぐる~

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 女とヒサシがラーメン店を出て、路地の道を真っ直ぐ行くと、実に、美しい海岸があった。  その海岸を見て、彼は故郷の海を思い出した。  こんなに美しい自然が‥‥と彼が感動していると、不意に彼女は全裸になり、凪いでいる海岸入って行っていた。  ヒサシも意を決して裸になると、彼女の元に急いだ。  そして楽しく水を掛け合い、子供のようにはしゃいだ。  彼女は、濡れて顔に着いた髪を可愛い仕草でかき分け、はしゃぎ続けた。その仕草が彼には、たまらなかった。  オマケに彼女の体はヒサシのタイプ、そのものだった。  やがて、バランスを崩したのか彼女が倒れた。  彼は思い切って彼女に抱き付いた。  が――えっ?   海水に溶けたかのように‥‥そこに彼女はいなかったのだ。  ヒサシは、口から海水を吐き出し、呆然と立ち上がると、周りを見回した。  果てしなく広く美しい海原があるだけで、彼女の姿は何処にも見えなかった。  ヒサシは彼女の名前を呼ぼうとして、はっとした。  彼女の名前も何も、僕は知らなかったのだ‥‥。
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