14人が本棚に入れています
本棚に追加
女とヒサシがラーメン店を出て、路地の道を真っ直ぐ行くと、実に、美しい海岸があった。
その海岸を見て、彼は故郷の海を思い出した。
こんなに美しい自然が‥‥と彼が感動していると、不意に彼女は全裸になり、凪いでいる海岸入って行っていた。
ヒサシも意を決して裸になると、彼女の元に急いだ。
そして楽しく水を掛け合い、子供のようにはしゃいだ。
彼女は、濡れて顔に着いた髪を可愛い仕草でかき分け、はしゃぎ続けた。その仕草が彼には、たまらなかった。
オマケに彼女の体はヒサシのタイプ、そのものだった。
やがて、バランスを崩したのか彼女が倒れた。
彼は思い切って彼女に抱き付いた。
が――えっ?
海水に溶けたかのように‥‥そこに彼女はいなかったのだ。
ヒサシは、口から海水を吐き出し、呆然と立ち上がると、周りを見回した。
果てしなく広く美しい海原があるだけで、彼女の姿は何処にも見えなかった。
ヒサシは彼女の名前を呼ぼうとして、はっとした。
彼女の名前も何も、僕は知らなかったのだ‥‥。
最初のコメントを投稿しよう!